zanzibar 29-1. dec. 2002

 

7:00起床。目覚ましも無いのに、なんという優秀さだろうか。おれは目覚めの達人なのかも知れん。生乾きのTシャツをカバンにぶち込み、チェックアウト。フロントへ降りていくと、いつもの兄ちゃんがシャワーの途中なのか、大事な下半身をバスタオルで巻いただけのムスリムにあるまじきセクシースタイルで、面倒臭そうに出て来た。水滴がポタポタと床を濡らしている。何処へいく?朝飯はいいのか?などなど、いつもは素っ気無いのに、なんか優しいじゃんか。忘れないためにここに記すぞ「サンキュー、KOKONI HOTEL」。

今日は島の東海岸側へ移動する大事な日。ある意味、今回の旅の最重要ポイントである。二日前、HAJIという名のすこぶる愛想のいいやつのPAJE行きの話に乗っかってしまったのだ。訳も分らず、そいつのブッキングオフィスへ行き10,000shも払ってしまった。事前入手の情報やなんとなくのカンで高いと感じたが、流れ重視の政策を採っていた当時のおれは気前良く払ってしまったのだ。二日前と言えば初日だ。金銭感覚がまるで成っちゃ無い、その上、全体の旅プランをとっとと立てておきたいと言う焦りがあったのかも知れん。高いったって1,000円レベルの話だからね、なかなかシビアに成り切れない余裕という名の「おごり」があるのだよ。ヤツは不思議な事にPAJEのホテルに電話で予約を入れる事も無く、今日の8:00に来いと言う。電話もせんと部屋押さえれるんか?という、二日経った今でも消えない不安を胸に、朝から容赦無い太陽光線攻撃に曝されて海岸通りを汗だくで歩く。「並つゆダクで!」と、吉野屋でのオーダーのシーンを無意味に想像しつつ、ブッキングオフィスを目指すのだ。しっかし、荷物重いでぇ〜。

8:00をちょい回っていたが、ほぼ約束通りのレベルで到着。なのになのになんでなんよ、ブッキングオフィスのドアは、ハマグリのように堅く閉ざされているでないの。おれのこの汗は無意味だっちゅ〜んかい?牛丼はどうなる!焦り&殺意&懇願&哀願、焦りの「り」がひらがななのが気に入らんが、とにかく色々とわしの胸に去来してきたのさ。堅く閉ざしたものは、無理矢理では開かない。これは、この世もあの世も支配している未来永劫温故知新万物共通の法則成り。ゴールドの鈍い光を朝の往来に怪し気に放つドアノブに優しく手をかける。無機質で退屈なドアと言えども、ノブは一番大事な部分だ。そこに触れられるとひとたまりも無いのだ。ドラエモンで言うとシッポ。引っ張ると死ぬで。男に例えると、これはもうゴールドで丸いんだからそりゃあんたキンタマ様ですよ。バリにはキンタマーニという性なる山があります。オランダにはスケベニンゲンが、ニューカレドニアにはエロマンガ島が、沖縄には満湖が、日本での戦いを終え世界各地へ散って行った仮面ライダーのような、心強さで地球を守っているのだ。そんな大事な秘部をですよ、優しく触れた次の瞬間グッと握り締め一気に押し込んだのですよ、汗だくの私は。すると、急に観念したかのように静かにスッ!と開いたのよ。まあこんな要らない描写は流してもらって、無人のオフィスで待つこと3分。何の問題も無くブッキング軍団の登場だ。何の事は無い。

「ナイストリップ!」と、インチキ軍団のインチキな笑顔で見送られながら、我が愛しのトヨタハイエースはスタートしたのだ。乗り組み員はジモティスタッフ3人、アングロカップル1組、アングロパッカー1人。そしてオレ様、レオ様じゃないよ。「ギャング・オブ・ニューヨーク」はどうか知らんが、「タイタニック」は薄っぺらバカ映画だったな。リアルに沈没を描写すればする程、人間を描く気が無い事が露呈してどんどん白けてったよ。まあ話しが進まないので、いちいちどうでもいい映画に突っかかるのは止めて、とにかく途中からも何人か地元の女の人とか乗り込んで来て、ただの乗り合いみたいになって行く。「あいのり」じゃないよ、あんなやらせ、いやいやいかん、また余計な事を。

しかし、景気よくぶっ飛ばしてはいるが、電話もして無い宿に飛び込みで押し掛けてなんとか成るものなんだろうか?ずっと燻り続けている不安が目指すPAJEへ近付くに連れ、どんどんと大きくなって行く。一緒に乗っている、アングロ達はちゃんと予約してるんだろうか?う〜ん、解せぬ。最悪は何軒もまわった挙げ句どこも一杯で、すごすごとストーンタウンへ引き返すのだろうか?別に一大事ではないが、面倒だな。ぶっ飛ばし約1時間半、うだうだ考えつつもインド洋側のPAJEに到着。スタッフに「お前はどこへ行きたいんだ?」という、アンビリバボーな質問を浴びせられる。おいおい今頃確認かい、と思いつつ「パラダイスビーチ」と答える。取り敢えずガイドブックに載ってるホテルね。本当にそこがイイかどうかは知らんけど、他は名前も知らんからね。「ああ〜そう」みたいな、人を不安にさせるには充分なリアクション。さ〜どうなる。取り敢えず一件目、アングロ達が降りて行く。そして残されたおれをすぐ隣の「パラダイス」へ。不安げに車を降り、フロントの方へ。モルジブにでもありそうな造りのコテージが並ぶ、リゾート度のかなり高い物件だ。椰子で葺いた大きな円錐形の大きな屋根が印象的なレストラン兼レセプションの建物に入る。何席かあるテーブルには日本人男二人組が覇気の無い顔でコーヒーか何か啜っている。「こんにちわぁ〜」と挨拶をしたのに、なんとなく首の角度を微妙に変えただけの会釈でお茶を濁される。お前ら濁った茶ぁ〜飲んどるんかい!声を出せ、声を。日本人に海外で会いたくない症候群のセコイブタめ!日本人が嫌なら日本人がオーナーのこの宿に泊まるな!不愉快なホモ野郎はほっといて、係りの男に部屋はあるかと聞いてみる。「フル、フル」と敢え無く玉砕だ。車に戻り、ダメだと告げる。そりゃそーだろ、正月だよもうすぐ。予約無しじゃダメでしょ、やっぱり。車はさっきのアングロが降りていった宿へ戻って行く。するとやはりアングロ達もダメだったらしく、車に戻って来た。なんだよ、さっきまでと同じじゃんかこの状態!でもこのアングロ達も予約してないみたいだな。ってことは、この飛び込み作戦は日常的に行われている普通極まりない宿の探し方なのね。少なくともみんな予約してないんだと言う事実が、不安を清清しい開き直りに変えてくれる。いいじゃん、行こうよ、とことんさ〜。海岸線を南下し続けて、南下し切って北上してさ、島一周する頃には何処か見つかるでしょ。で、ダメならさ、またみんなでストーンタウンへ帰ればいいんだからさぁ〜、そしたらさぁ〜あの素敵な屋台でさ、魚でもイカタコでもなんでも頼んでさ、反省会しようよ。アングロもジャップも無いジャン。みんな仲間だよ。ドォ〜ンと行こうよ、ドォ〜ンと。地球も島も丸いんだからさ。心もマルで行かなきゃね。

デコボコやデカイ水たまりの素敵な道をグリグリ進み何件かまわるも、どこも「フルフルフル」と楽しそうに断られる。このフルチン野郎が!一件ほど部屋があったのだが、アンクロカップルの女が、ビーチの海藻が嫌だとクソみたいな理由でエラソーに却下しておった。少しリゾート過ぎる物件だったのでおれは辞退したのだ。値段もそれなりだしね。毎朝スタッフが広いビーチをほうきで掃いて綺麗にするようなトコ嫌だしね。もっと剥き出しでいいのよ、私の場合は。絵葉書のような生気の無い死んだ景色じゃなくて、そこに生きている人達が輝いて見えるような命の海。それが理想だね。今思えば「パラダイス」が満室だったのはラッキーだったのかも。理想に近付く希望を与えられたちゅうことでしょ。素朴な安宿待ってろぉ〜。心の中で奇声を発しつつも、素朴ゆえに激しく揺れる悪路に「てめぇ〜、本当の素朴がどんなもんか分かってンのかぁ〜」的な言葉を浴びせられている気分だ。真の素朴とは?心地良いだけの都合の良いモンじゃぁないとは思うが、蚊もたくさんいるんだろうなぁ〜、さわやかな海の風なんってたって実際はベトベトするんだよなぁ〜、足の裏は砂だらけだしなぁ〜、クラゲなんてサイテーの嫌なやつらだしなぁ〜、意外と野犬とがやっかいなんだよなぁ〜、素朴な宿のベッドには南京虫とかいるんだよね、極端に海辺のシャワーって薄味の塩水だったりする事あるし、シャワーの意味ねぇ〜じゃん、そうそうアリがまたすごいんだよ、波照間島の宿じゃお菓子とか床に置かないで、ひもで吊るしてたもんなぁ〜、そいうえば夜寝てたら枕元で「ボトッ!」ていう音をたてて巨大ムカデの襲撃を喰らったことあったしなぁ〜、う〜ん。いつの間にか「理想の素朴」から「素朴のダークサイド」へと思考が移行してしまっていた。

いつしかPAJEを通り過ぎJANBIANIというエリアに南下していた。予想通りのズルズルな展開じゃ。しかし、良い徴候もある。人気の無いデコボコ道から漁師村のような景色に変わり始めたのだ。石とヤシやバナナらしき葉で出来た簡素な家に網などが干してある。おお〜良い展開、期待させるぜ。こういう村に民泊でもいいぜ。良い景色に急に強気だ。窓の外の素朴純度97%程の家々や人々をウットリ眺めていると、おもむろに左へ曲り海辺に出た。車を止めみんなで外へ。今まで何度となく繰り返した動きを丁寧になぞるように外へ出た。

最初どれが宿か分らんかったで、って感じの平屋が2件並んでいた。奥の物件に案内されると、表で日光浴をしていた海パン姿の陽気なイタリア〜ノが気分の良い挨拶をくれた。おおぉ〜、グレイト!良い出会いってやつじゃない!そいつの周りには近所のガキンチョが何人かまとわり付いている。微笑まし度200%。中へ入り部屋を見る。ここが満室では無いことは一目瞭然。シャワーとトイレも部屋にあるよと、コワ面の宿のおやじが説明してくれる。「ちょっと水だしてよ」というおれの注文に快く応じるも、水は出ず、バツの悪い感じで慌ててタンクにたくさん水はあるから大丈夫だと言う。この島に来て頻繁に耳にする「ハコナマタタ」を聞いてしまった。ノープロブレムの意味。海外旅行ではお馴染みですね、ハイ。部屋は全部で4部屋だけ。宿の入り口を入ると、リビング兼食堂(テーブルがポツンと一つあるだけだが)があり、その両脇に2つづつ部屋がある。至ってシンプル。部屋も狭すぎず充分な広さがあり、2カ所の窓からは気分良く風が入って来る。いいじゃんいいじゃんいいじゃない!正に素朴、シンプル。寝て起きてクソして食って、また寝て起きる。これぞ本来の人間の姿じゃあないですか。何より周りの暮らしから隔離されたリゾートじゃないのがいいね。村の中に極々自然に、魚屋の隣に八百屋があるような自然さでこの宿が存在してるのが最高だ。目の前の海にはダウと呼ばれるインド洋独特の木製の船が何艘も停まっている。明らかに観賞用の死んだ海ではない。生活の糧を得るための恵みの海じゃぁないですか、みなさん!交渉の結果一泊15$。たぶんちょい高めだと思うが、ここに決定だ。9回裏のサヨナラホームランでもぶちかましたかのような充実感が体中に漲る。宿の名は「SUN PARADISE」。おぉ〜最初に行った「パラダイスビーチバンガロー」とは、同じ「パラダイス」でも大違いじゃ。正にパラダイス。長く不安な旅だったが、やっと見つけたぜ!